犬のお世話をしてこその飼い主
「上司から部下への命令は、命令が行われたときに成り立つのではなく、部下が上司の命令を受け入れた時にはじめて成り立つ」経営学者のチェスター・バーナードさんが提唱した、権限受容受容説です。
犬と飼い主さんの関係は上司と部下とは違いますが、飼い主さんが「待て」などの指示を出す、という立場は同じ。犬に飼い主さんのいうことを聞く気がなければ、いくら指示を出しても実行してくれません。
私の場合、犬が基本的に苦手であるということもあり、一般的な愛犬家さんたちのようなスキンシップはとってきませんでした。それでも、ある程度の指示にはしたがってくれますし、帰宅すると尻尾を振って喜んでくれます。
ところが、先日、私がコロナ感染をして自宅療養となった時に変化がありました。
家族に感染させないよう、一室にひきこもって10日間の療養生活をしたのですが、当然、犬の相手もできません。部屋とトイレ、風呂の往復だけの移動の間に、犬と目が合うこともしばしばありましたが、私は声をかけず、避けるようにしていました。
最初の頃は、そばに寄ってこないものの、尻尾を振って、相手をしてくれることを期待しているようでしたが、後半は視線があっても、なんだ、あんたか。と言わんばかりにその視線を外すようになります。撫でてくれアピールも一切ありません。
ほんの1週間コミュニケーションを取らない、排泄物の処理をしない、というだけで、この有様です。
もちろん、飼い主さんが病気になったことを察知して、療養の邪魔をしないように気を遣うことのできる天才犬である可能性もゼロではありません。
しかし、相手をしてくれないなら、こちらも愛想をする必要もない、と犬が思ったのだと考える方が自然です。お世話をしてこその飼い主。犬にこの人にお世話してもらっている、相手をしてもらっていると認識してもらえて、初めて犬の飼い主になれるのだと痛感しました。
コメント